第28回定期演奏会

 

日時:2011年7月10日(日) 13:30開場 14:00開演

 

文京シビックホール

 

1 トマス・タリス作品より  

 

  Thomas Tallis 作曲

 

  指揮 中館伸一

 

  If ye love me                 中館伸一 編曲

 

  O sacrum convivium!            中館伸一 編曲

 

  The Lamentations of Jeremiah I

 

2 男声合唱曲集「白いうた青いうた」より

 

  谷川雁 作詩  新実徳英 作曲

 

  指揮 村松賢治  ピアノ 金子信子

 

  I. 薔薇のゆくえ II. ぶどうとかたばみ  III. とげのささやき

 

  IV. 壁きえた  V. 南海譜

 

3 男声合唱とピアノのための「ふじの山」~明治・大正の唱歌編曲集~

 

  寺嶋陸也 編曲

 

  指揮 村松賢治  ピアノ 金子信子

 

  I. 春の小川  II. 鯉のぼり  III. ふじの山  IV. 荒城の月

 

  V. 夕焼け小焼け  VI. 冬の夜  VII. 故郷  VIII. 村の鍛冶屋

 

 

4 男声合唱曲集「そのひとがうたうとき」

 

  谷川俊太郎 作詩 松下耕 作曲

 

  指揮 中館伸一  ピアノ 金子信子

 

  I. 私たちの星 II. あい  III. そのひとがうたうとき  IV. 信じる

 

(エール)

 

  ディオニュソスの息子たち(関裕之 作詩  多田武彦 作曲)

  

指揮 高橋雄太 

「現在(いま)歌うということ」

 

指揮者 中館伸一

 

 3月11日に発生した東日本大震災の後、3月19日の午後に広友会メンバーは練習を再開しました。メンバーの中には様々な葛藤がありました。「まだ歌なんか歌っている場合ではない」「いや、このような時だからこそ歌うのだ」「どういう気持ちで歌えば良いのかわからない」など様々な声。そして何とか練習に集まることの出来たメンバーも一様に顔色が悪く、口数も少なく、私も胸が痛みました。合唱指揮者である私もこの日が震災後の活動開始日になりましたので、心に葛藤を抱えながらメンバーの前に立ちました。集まってはみたものの、本当に歌えるものなのか?歌うことが出来るのか?指揮者としても内心は不安でしたが、練習を開始すると、メンバーの表情も声もすぐに良くなっていきました。その不安を「音楽の力・合唱の力」が完全に取り去ってくれたのです。数時間の練習で不安やストレスが見事に解消されたのです。私自身も衝撃を受けるほどの変化でした。その後も、私は連日のように合唱団の練習場で同じ経験をしてきました。そして、震災を機に全ての合唱団が「歌うことの意義」「何故私たちは歌うのか」と自らに問い、今まで平和に合唱活動が出来ていたことに改めて感謝し、現在(いま)私たちに何が出来るのか?と真剣に考え、活動しています。辛く、苦しく、悲しい想いをされている方々のために私たちの歌声が少しでも役に立てるなら、と…。

 

 本日の演奏会のプログラムは、奇しくも現在(いま)歌うことに大きな意味を持つ曲が並びました。練習をしていても胸が熱くなることが多々ありました。「エレミアの哀歌」では預言者エレミアがエルサレムの荒廃に胸を痛め、人々に「汝が主なる神に立ちかえれ」と呼びかけます。私たちも直面している危機を乗り越えるために今一度原点に立ちかえらねばならないのかも知れないと考えさせられるのです。「白いうた 青いうた」では時代に翻弄される人々の喜びや悲しみ、さだめ、鎮魂の歌、が聴こえてきます。そして私たち日本人の宝とも言える「故郷」を始めとした唱歌にはいつも癒しと勇気を与えられます。“私たちの星”には“あい”が溢れています。未来を“信じる”心で私たちは歌います。皆様に喜んで頂けるよう、心を込めて、祈りを込めて。

「歌う尊さ」

 

代表:伊藤 俊明

 

 始めに、去る東日本大震災で犠牲に遭われました方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、福島原発の事故との連鎖で被災されましたみなさまに、衷心よりお見舞い申し上げます。原発の事故の収束が未だ遠い情況の中で本日、第28回定期演奏会を開催する運びとなりました。ご来場いただきましたみなさまには、そのご厚情に対しまして深く感謝申し上げます。

 

 心の暗い影を拭い去れない今、私達の歌声をどう聴衆のみなさまにお伝えすることが出来るのか、思い巡らしていました時、幾つかの力強いメッセージが目に留まりました。フィレンツェ歌劇場公演の最中に震災に遭い、楽団員全員が帰国した後、指揮者ズービン・メータ氏が再来日、N響を率いて「第九」を演奏、満場総立ちで拍手を贈る中、ズービン・メータ氏は日く、「平和は音楽の中にこそある。苦しむ人たちの前で音楽を奏でるために、私たち音楽家はいる」(朝日新聞4月18日)、と。

 

 或いは近藤誠一文化庁長官のメッセージから、「明日への夢と希望をもって頂くことが必要だ。精神安定剤はあっても希望を与える薬はない。それが出来るのが文化芸術だ」(日本経済新聞4月8日)。

 

 過去、私達はただひたすら歌ってきました。然し今日ほど歌う尊さに向き合ったのは初めてかも知れません。中館伸一先生は練習ご指導の都度、歌う尊さに対して心のこもったお言葉を与えて下さいました。「閉塞した半鬱の心のストレスを解き、祈りと癒し、希望と勇気、人々の絆を、深く心に憶えて歌いましょう」と。本日演奏致します曲目の中には、先生のお言葉に相応しい曲も少なくありません。私達の歌声を通して、その心をみなさまにお伝えすることが出来れば、これに過ぎる喜びはありません。

 

 歌うことが出来る幸せに感謝しつつ、明るい未来に向けて、今後とも音楽創りに努めて参る所存です。みなさま方の変わりませぬご支援を心からお願い申し上げます。

 

 最後になりましたが、溢れる熱意で私たちを魅了し、ご指導を賜りました指揮者の中館伸一先生と村松賢治氏、そしてピアノ伴奏者の金子信子様に深甚の謝意を表します。