第25回定期演奏会

 

日時:2008年2月23日(土) 17:30開場 18:00開演

 

すみだトリフォニーホール

 

1 預言者エレミアの哀歌(Lamentations)  

 

  William Byrd 作曲  Sally Dumkley 編曲

 

  指揮 藤井宏樹

 

2 Mäntyjärvi男声合唱曲集

 

  Die Stimme des Kindes(幼子の声)

 

  Pseudo-Yoik NT(ヨイクまがい(男声版))

 

  Jaakko Mäntyjärvi 作曲

 

  指揮 藤井宏樹

 

3 男声合唱とピアノ(四手)のための「遊星ひとつ」

 

  木島始 作詩  三善晃 作曲

 

  指揮 藤井宏樹  ピアノ 安次嶺景子 金子信子

 

  I. INITIAL CALL II. だれの?  III. 見えない縁のうた  IV. バトンタッチのうた

 

 

4 男声合唱とピアノのための「水と影、影と水」

 

  Federico Garcia Lorca 作詩  長谷川四郎 訳詩  寺嶋陸也 作曲

 

  指揮 藤井宏樹  ピアノ 寺嶋陸也

 

  I. 風に乗ったドン・ペドロ II. グラナダと1850  III. スペイン警官隊のロマンス

 

(アンコール)

 

  風になりたい(川崎洋 作詩  寺嶋陸也 作曲)

 

 指揮 藤井宏樹   ピアノ 寺嶋陸也

 

(エール)

 

  ディオニュソスの息子たち(関裕之 作詩  多田武彦 作曲)

「演奏会によせて」

 

音楽監督 藤井宏樹

 

  私のようなものでも、こうして音楽を続けてくると、今自分が取り組んでいる、その音楽を演奏する理由について、確かめたくなることがある。無我夢中でやり始めたことに、ただ好きなだけで取り組んできたものに対して、今はさらに続けていく為の理由が必要になったのか?この自分への問いは、たしかに過去にも何回か繰り返されてきたことではあるが、次第にその質は変化し、回数は増えているようだ。おそらく自分が何者なのか?ヘの問い、として、この自問は続くことになろう。 

 

  広友会との付き合いは、もう10年を数えたか?私には出会ったことのない、活動のスタイル、演奏表現、個々の価値観に至るまで、それらは私にとって、新鮮な喜びと、失望とをなんども行き来させた。しかしそれがこれまでの、様々な活動の立体を生んできたと言える。古今東西の名曲、いわゆる日本のグリースタイル、委嘱作品もすでに2曲、きわめて難度の高い作品への挑戦。おそらく日本の男声合唱団の中でも、極めて柔軟な広がりを持った、魅力ある団体と言っていいのではないか。こうした活動を支え共同してきた仲間は、この歴史を自分の物として抱いてくれているだろうか。音楽芸術を自らの活動の根幹として未来を創ろうと声をかけ合ってくれているだろうか。この活動に確かな価値を見いだしてくれたのだろうか。最近の自問にはこれらの不安が根を張っているのか。 

 

 いわゆる個性の確立は自らを投げ出し、そのことが他との共同を成功させたとき、ある評価として輝き還ってくるものだ。自らの価値観や思惑を白紙にしながら、人は新しい創造を繰り返してきたが、ここにこそもっとも強い、かつ魅力的な個性が誕生すると言ってもよいのではないだろうか。そう、無心に・・という言葉の証になりはしないか? 

 

 人は立場や年齢、富などの衣を着て生きてはいるが、こうしたところからの視座に、音楽は扉を開いてはくれまい。やがて人生が朽ちて果てるとき、私たちはなにを心に抱きその生涯を終えるのだろうか。 

 

「ごあいさつ」

 

代表:伊藤 俊明

 

 間もなく春です。久し振りにみなさまにお会いできますことを、とても嬉しく存じます。1年9ヶ月振りに、第25回定期演奏会の日を迎えました。お忙しい中、ご来場くださいましたみなさまに、厚く御礼申し上げます。

 

 一昨年5月以来、様々な事情によりまして、定期演奏会の開催を先送りしてきましたが、この間に在りましても、合唱活動はむしろ間口を広げて行ってまいりました。桜楓(女声)合唱団との混声合同演奏や、新田ユリ先生指揮によるシベリウス作「交響詩クッレルヴォ」のアイノラ交響楽団との共演など、いずれも音楽監督・藤井宏樹先生の先導により、男声合唱一筋の広友会に、新しい音楽の世界の扉を開いたものでした。

 一方、ご来場のみなさまの中には、毎年の定期演奏会を待っていて下さる方も居られ、そのようなお声を少なからず耳にいたしました。私たちは、今後、できる限り年一度の定期演奏会を守って行く所存でございます。

 

 ところで、本日の演奏曲目はいずれも挑戦的、難曲揃いです。特にカウンターテナー付きの男声合唱曲は、企業で言えば新商品の市場投入の如きで、意欲に実力が伴うかどうか、不安なしとしません。しかし藤井宏樹先生の手により、また、樹の会の有力合唱団メンバーであります雨宮昌子先生、そして高橋理恵様と渡辺満奈津様のご助力をいただき、何とか新商品の形となりました。広友会の新しい進路になれば幸せに思います。

快く賛助をお引き受けくださいました3名のみなさまに心から御礼申し上げます。

 

 翌年、2009年は広友会創立30周年を迎えます。延々と歌い続ける団員もそろそろ高齢期に達します。企業では熟年と言うべきところ、合唱人生には残念ながら卒業がなく、末だ若いと言う錯覚に溺れて、老若が揮然と歌う群れ、これが広友会です。今後とも、みなさま方の変わりませぬご声援を、よろしくお願い申し上げます。

 

 今回の演奏会は例年になく、大勢のみなさまのご指導とご支援をいただきました。

藤井宏樹先生は勿論のこと、他に例を見ないユニークな男声合唱曲「水と影、影と水」のピアノを自ら弾いて下さいました作曲家の寺嶋陸也先生、また「遊星ひとつ」のピアノ奏者の安次嶺景子先生、一年に亘ってピアノで練習を支えて下さいました第一の功労者で、同じくピアノ奏者の金子信子先生、ヴォイス・トレーナーの雨宮昌子先生、そして、「遊星ひとつ」のステージに友情出演をして下さいました20数名の「樹の会」所属の合唱団のみなさまに深甚の謝意を表します。