第21回定期演奏会
日時:2003年5月24日(土) 13:00開場 13:30開演
すみだトリフォニーホール
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1 男声合唱とピアノのための「新しい歌」
信長貴富 作曲
指揮 松﨑隆行 ピアノ 金子信子
I. 新しい歌( フェデリコ・ガルシア・ロルカ 作詩 長谷川四郎 訳詩)
II. うたを うたう とき(まど・みちお 作詩)
III. きみ歌えよ(谷川俊太郎 作詩)
IV. 鎮魂歌へのリクエスト(ラングストン・ヒューズ 作詩 木島始 訳詩)
V. 一詩人の最後の歌(ハンス・クリスチャン・アンデルセン 作詩
山室静 訳詩)
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2 Missa c-moll より
フランツ・リスト 作曲
指揮 藤井宏樹 オルガン 大竹久美
I. Kyrie II. Gloria III. Agnus Dei
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3 De profundis
アルヴォ・ペルト 作曲
指揮 藤井宏樹 オルガン 大竹久美 打楽器 小林幸子
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4 男声合唱組曲「水のいのち」
高野喜久雄 作詩 髙田三郎 作曲
指揮 藤井宏樹 ピアノ 金子信子
I. 雨 II. 水たまり III. 川 IV. 海 V. 海よ
(アンコール)
故郷(『ノスタルジア』より)(信長貴富 作曲) 指揮 藤井宏樹
(エール)
ディオニュソスの息子たち(関裕之 作詩 多田武彦 作曲)
演奏会に寄せて
音楽監督 藤井 宏樹
私たちが、時代、環境、人、に向き合い、その末に心が沈黙を広げなければならなくなった時、そこからうまれてくるものは祈りなのだと、私は思っているのだが、今日の演奏会はそうした祈りをテーマとした。
この原稿を書いている今、ちょうどTVではバクダットが陥落したと報道している。
解放された市民が歓喜している映像もある。
私の姪は、今一歳半ほどになるが、花火の音が大嫌いだ。大泣きして炬燵にもぐる。
思えば私もそうだった。幼い頃の大きな恐怖の思い出だ。バクダットの子供たちには、もぐる炬燵も飛び込む父親の膝さえももう無い。真っ暗な痛みと不安は、誰も救うことができずにいるのだ。このことはいったいどうなるのだ。大きな恐怖によって生まれた憎しみや痛みは、どうやって消化することができるのだろうか・・・・・。人が生まれ、その一生を終える時の流れは、大いなる自然の厳しい営みと同じようにある。その厳粛な尊い刻を誰が踏みにじっていいものか。
広友会は文字通り戦後高度成長時代、広島を故郷とする友たちが始めた合唱団だ。ほんの半世紀前の悲しい出来事を包み込み、こうしてさまざまなメンバーを抱えるようになった今でも、彼らの活動には、時代に向かい、社会を支えてきた人間たちの信念が流れている。そして、その内には、手繰り寄せるようにして育まれてきた歓喜の声が秘められているのだ。私は、彼らがずっと歌い続けてきた理由をそう解釈している。だが、時代は今、このことを飲み込んでしまおうとしているのか?
リストもペルトも信長貴富も、そして高田三郎も、この合唱団の活動が深く様々な面を持つ立体であることを知り、多角的に光を当てようと試みたつもりなのだが、昨今の情勢が、暗い思い影をこの祈りに背負わせることになってしまった。しかい、この重みによって、これらの作品の存在は、わたしたちをさらに音楽の本質に向かわせ、ひきつけていく。
5月24日の演奏を、私は一生忘れることがないと思う。
ごあいさつ
代表:伊藤 俊明
爽やかな初夏の訪れとともに、本日、第21回定期演奏会を迎えました。ご多忙の中、ご来場下さい
ましたみなさまに、厚く御礼申し上げます。
藤井宏樹先生に音楽監督のご就任をお願いして一年目の今日、すみだトリフォニーホールに場所を移して、団員一同、真新しい気持ちでこの日を迎えました。
本日の演奏会は「祈り」をテーマとして、オルガン伴奏曲を含む選曲や会場の選定など、全て音楽監督のデザインにより企画されました。歌いたい曲で構成する演奏会から一変して、一つのメッセージを伝える演奏会は今回が始めての試みであります。
「祈り」は人に語りかけるものではなく、自分への問いかけと自らの浄化であり、そして美しいものへの高みへの希求にほかなりません。
このことを強く実感しましたのは「水のいのち」でした。高田三郎先生の秀作に藤井先生が見事に表情を与えてくださり、私たちは何か心の扉が開かれた思いがいたします。
このことを本日、みなさんにお伝えすることが出来ますかどうか、不安なしとしません。
どうぞ、ご忌憚のないご意見をお寄せ下さいますよう、お願い申し上げます。
祈りが全ての人の心にあって、世界に永遠の平和がありますように。
この一年を顧みて、熱烈なご指導を賜りました藤井宏樹先生と、ご多忙の中、お力添えを賜りましたオルガン奏者・大竹久美先生、ピアノ伴奏者・金子信子先生、そして打楽器奏者・小林恵子先生に深甚の謝意を表します。