第18回定期演奏会

 

1999年3月5日(日) 15:15開場 16:00 開演

 

簡易保険ホール「ゆうぽーと」(五反田)

 

エール「ディオニュソスの息子たち」

 

  関裕之 作詩  多田武彦 作曲

 

  指揮 村松賢治

 

1 男声合唱 日本民謡曲集より

 

  清水脩 作曲

 

  指揮 藤井宏樹

 

  I. そうらん節  II. 機織唄  III. 五つ木の子守歌  IV. 最上川舟唄

 

2 Missa aeterna Christi munera

 

  G. P. da Palestrina 作曲

 

  指揮 村松賢治

 

  I. Kyrie  II. Gloria  III. Sanctus  IV. Benedictus  V. Agnus Dei

 

 

3 二群の男声合唱とピアノのための「路標のうた」

 

  木島始 作詩、 三善晃 作曲

 

  指揮 松﨑隆行  ピアノ 廣瀬康

 

4 4 Cantos penitenciales(悔悟節の4つのうた)

 

  Javier Busto 作曲

 

  指揮 藤井宏樹

 

  I. De profundis  II. Christus factus est  III. Tristis est anima mea

 

  IV. Tenebrae factae sunt

 

(アンコール)

 

  壁きえた(『壁きえた』より)(谷川雁 作詩 新実徳英 作・編曲)

 

  指揮 村松賢治

 

  黄金の魚(『クレーの絵本 第2集』より)

 

(谷川俊太郎 作詩 三善晃 作曲) 指揮 松﨑隆行

 

  作品第貮拾壹(『富士山』より)

 

(草野心平 作詩 多田武彦 作曲) 指揮 藤井宏樹


清水脩編曲「日本民謡集」解説 

 

 1950年代、作曲家・清水脩は日本各地の民謡に取材し、『五つの日本民謡』という曲集を発表した。それは下記の4曲と「佐渡おけさ」から成るもので、また、その後「八木節」「牛追い唄」「大漁祝い」「黒田節」を加えた9曲の『日本民謡集』も編まれた。清水は、編曲に当たって「民謡の原型をそのままに残し」「日本旋法を

主体とする和声をつけ、また対位的に処理する方法」を取ったと述べている。

 

【最上川舟唄】昭和初期に仙台のNHKの依頼で、最上川を下るラジオの企画番組のために、後藤岩太郎というアマチュアの民謡歌手と、渡辺国俊という民謡愛好家が相談してつくった唄。最上川の川舟の船頭の掛け声に、酒田へんでうたわれていた追分節をのせている。追分節はもともと信濃の追分宿のお座敷唄で、それが陸運で新潟に運ばれ、海運で日本海沿岸のあちこちの港にひろまったものである。

 

     エエヤ エエンヤエ エンヤエト

     ヨイサノ マーカショ エンヤコラ マーカショ

   酒田さ行ぐはげ 達者でろちゃ

   はやり風邪など ひがねよに

     ヨイサノ マーカショ エンヤコラ マーカショ

     エンヤ エーンヤ エーエンヤ エト (以下、掛け声略)

      別れつらさよ 山背の風だ おれを恨むな 風うらめ

   酒田さいままち 鳴いて通るカラス 銭も持たずに かおかおと

   五間二尺の ござほを上げて くだす酒田の 大港

   あの娘のためだ なんぼ取っても たんと たんと

 

 

【五木の子守唄】九州の肥後の国、球磨川水系の地域全般で歌われていた子守唄。支流の川辺川をさかのぼった五木村でもっともよく伝承されたので「五木の子守唄」と呼ばれる。この地域の小作農の子供たちは侍の家やお寺や土地を持っている檀那の家に無給で年季奉公に上がった。十歳ぐらいの女の子が、奉公先の赤ん坊の守りをしながら、自分の身の上をうたったもの。子供を寝かそうという歌と言うより、子守りの恨みごとをならべあげた歌である。

 

   おどまくゎんじんくゎんじん ぐゎんぐゎら打ってさるこ

      ちょかでまま炊ァて 堂にとまる

    〈私は勧進の物乞いとおなじ、がんがら太鼓を打って歩く。

      竈でなく土瓶でご飯を炊いて道ばたのお堂に泊まる。〉

   おどんがくゎんじんくゎんじん  あんしと達ァ良か人

      良か人ァ良か帯 良か着物

    〈私は勧進の物乞いとおなじ、けれど、奉公先のあの人達はうまれつき良い身分のひとたち。

      良い生まれの人たちは良い帯をしめ、良い着物を着ている。〉

      おどんが打死んだちゅうて 誰が泣ゃァてくりゅうきゃ

      裏の松山 蝉が鳴く

    〈私が死んでも、誰も泣いてはくれないだろう。

      裏の松山で蝉が鳴くばかり。〉

      おどんが打死ねば 道ばた埋けろ 通る人ごち花あげる

    〈私が死んだら、道ばたに埋けてね。

      そこを通る人は花をあげてね。〉

   花は何の花 つんつん椿 水は天から もらい水

    〈花は何の花? ひとりでにぽっとり落ちるつんつんつばき。

      死んだ私に供えられる水は、天からもらう雨の水。〉

 

 

【機織唄】秩父地方、飯能あたり、秩父銘仙という白地の高級絹織物の家内手工業の作業唄だが、日本全国の機織り仕事の歌に共通したパターンにのっている。「庭の夜具地」は、洗い張りして農家の庭先に干してあるふとん用の生地だろう。「すいと」は虫の名で、スイッチョ、別名機織り虫のことで、織り手が「すいと」に自分の姿を見出しているのである。おさは手織の機の縦糸を通して、手元で織物の目をつめる道具。

 

   山は紫 うぐいす鳴いて 秩父よいとこ 機どころ

   もずが高鳴く 秋晴れ日和 庭の夜具地が よくかわく

   青い月夜に すいとが鳴いて 夜機おってる おさの音

   あかいあの人 染め糸さらす さぞや寒かろ 川風に

 

 

【そうらん節】北海道近海のニシン漁で歌われる歌のうち、網からニシンを船にすくい上げるときの作業歌をひろく「そうらん節」という。歌詞には多数のパターンがあるが、色町で流行のお座敷歌の歌詞がしばしば用いられた。たとえば「沖のかもめ」にも、漁師たちから見た女郎衆のイメージが重ねられているようだ。なお、「くき」はニシンの群が押し寄せることである。

 

   ヤレ そうらん そうらん

   沖の鴎に 潮時きけば 私ゃ立つ鳥 浪にきけ

    チョイ ヤサエーヤー ドッコイショ    (以下、掛け声略)

   くきが続けば 千両や万両 網も鰊で 銀の色

   玉の素肌が しぶきに濡れりゃ 浮気鴎が 見て騒ぐ