第17回定期演奏会
1999年3月21日(日) 15:15開場 16:00 開演
簡易保険ホール「ゆうぽーと」(五反田)
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エール「ディオニュソスの息子たち」
関裕之 作詩 多田武彦 作曲
指揮 松﨑隆行
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1 Missa Mater Patris
Josquin des Prez 作曲 皆川達夫 編曲
指揮 村松賢治
I. Kyrie II. Gloria III. Sanctus IV. Benedictus V. Agnus Dei
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2 唱歌の四季
中村雨紅 他 作詩 三善晃 編曲
指揮 松﨑隆行 ピアノ 廣瀬康
I. 朧月夜 II. 茶摘 III. 紅葉 IV. 雪 V. 夕焼小焼
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3 プーランク男声合唱作品より
Francis Poulenc 作曲
客演指揮 藤井宏樹
Quatre petites prières de Saint François d’Assise
I. Salut, dame Sainte II. Tout puissant, très saint
III. Seigneur, je vous en prie IV. O mes très chers frères
Laudes de Saint Antoine de Padoue より
I. O Jesu IV. Si quaeris
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4 男声合唱組曲「柳河風俗詩」
北原白秋 作詩 多田武彦 作曲
客演指揮 多田武彦
I. 柳河 II. 紺屋のおろく III. かきつばた IV. 梅雨の晴れ間
(アンコール)
立秋(『柳河風俗詩・第二』より)
(北原白秋 作詩 多田武彦 作曲)
指揮 多田武彦
北極星の子守歌(『壁きえた』より)
(谷川雁 作詩 新実徳英 作曲・編曲)
指揮 藤井宏樹
「唱歌の四季」(三善晃編曲) 歌詞と解説
1.朧月夜
菜の花畠に 入日薄れ、
見わたす山の端 霞ふかし。
春風そよふく 空を見れば、
夕月かかりて におい淡し。
里わの火影も、森の色も、
田中の小路を たどる人も、
蛙のなくねも かねの音も、
さながら霞める 朧月夜。
高野辰之作詞・岡野貞一作曲で、大正三年の尋常小学唱歌(六)に採られました。
一番から二番へと、夕暮れの時間の経過がたくみに写し取られています。「に
おい」は古語の「目に見える色合いの美しさ」の意味。月の輝き始めた夕空の色を
「におい淡し」と捉えたのです。やがて、里の家々の燈火や道を行く人影のみなら
ず、耳に聞こえる蛙の声や鐘の音まで、すべて霞のうちにぼんやりとして、春の夜
が更けて行きます。
2 茶摘
夏も近づく八十八夜、
野にも山にも若葉が茂る。
「あれに見えるは茶摘じゃないか。
あかねだすきに菅の笠。」
日和つづきの今日此頃を
心のどかに摘みつつ歌う。
「摘めよ摘め摘め摘まねばならぬ。
摘まにゃ日本の茶にならぬ。」
作詞者・作曲者不詳。明治四十五年の尋常小学唱歌(三)の曲です。歌詞の中の
「 」で引いた部分は、山城の宇治で実際に歌われていた茶摘み歌を取り込んだも
のだと言われています。八十八夜とは、立春から数えて八十八日めのことで、もう
霜の降りる心配がなくなる目安とされていました。農繁期が来て、わけても茶畠で
は摘み取りに忙しいというのです。
3 紅葉
秋の夕日に照る山紅葉、
濃いも薄いも数ある中に、
松をいろどる楓や蔦は、
山のふもとの裾模様。
渓の流に散り浮く紅葉、
波にゆられて離れて寄って、
赤や黄色の色様々に、
水の上にも織る錦。
「朧月夜」と同じく高野・岡野のコンビによる傑作。明治四十四年の尋常小学唱
歌(二)に採られました。一番で山の紅葉、二番で川の紅葉を歌っています。紅葉
を錦にたとえる発想は和歌の伝統では常識的で、たとえば百人一首には「嵐ふく三
室の山のもみじ葉は龍田の川の錦なりけり」(能因法師)があります。国文学者で
あった作詩者、高野辰之らしさがあらわれていると言えます。
4 雪
雪やこんこ霰やこんこ。
降っては降ってはずんずん積る。
山も野原も綿帽子かぶり、
枯木残らず花が咲く。
雪やこんこ霰やこんこ。
降っても降ってもまだ降りやまぬ。
犬は喜び庭駈けまわり、
猫は火燵で丸くなる。
作詞者・作曲者不詳で、明治四十四年の尋常小学唱歌(二)所収の歌です。樹木
の雪を花と見るのも、日本の古典的な発想です。雪によって木に花が咲くことを喜
ぶことの背景には、農作物の豊年を願う心があります。また、「こんこ」は「来う
来う」の変化した形で、「雪よ降れ降れ」と呼びかけているのだという説が有力で
す。
5 夕焼小焼
夕焼小焼で日が暮れて、
山のお寺の鐘がなる。
お手々つないで皆かえろ、
烏と一緒に帰りましょ。
子供が帰った後からは、
円い大きなお月さま。
小鳥が夢を見る頃は、
空にはきらきら金の星。
中村雨紅作詩、草川信作曲。昭和初期の童謡創作運動の成果の一つです。当時小
学校の教師で、八王子市の北西の山間部に住み八王子の駅へ徒歩で通勤していた雨
紅が、家路をたどりながら見た情景を歌った作品です。現在ではそのあたりは「夕
やけ小やけの里」と名付けられ、作詩者自筆の碑が立てられています。